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株式会社Tonal Harmony代表の水上寿美江です。今日は先日訪問したコンサートについてお話いたします。

 音楽って本当に「音」「楽」なんだと感じる瞬間

音楽って本当に「音」「楽」なんだと感じる瞬間〜私はそんな一瞬を求めて何度も何度もコンサートに足を運ぶのかもしれません。

20世紀最後の巨匠といわれるヴァイオリニスト イヴリー・ギトリスと日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートに伺いました。

プログラムは

J・Sバッハ作曲 G線上のアリア

J・Sバッハ作曲 2つのヴァイオリンのためのコンチェルト ニ短調 BWV1042

マスネ作曲 タイスの瞑想曲

サン=サーンス作曲 ハバネラ

J・Sバッハ作曲 ヴァイオリンコンチェルト 第2番 ホ長調 BWV1042

 

タイスの瞑想曲は幾度と自分自身も演奏したことがある曲であり、たくさんの素晴らしい音楽家の演奏を聴いた曲です。しかし、ギトリス氏のタイスの瞑想曲…聴いたことのないはじめて知ったような曲…後にも先にもタイスの瞑想曲でこんな思いをすることはないのだろうと、本当に驚きの演奏でした。

そして、プログラムが前後しましたが、1部で演奏した《2つのヴァイオリンのためのコンチェルト》は、ギトリス氏と日本フィルハーモニー交響楽団ソロコンサートマスターでありギトリス氏の愛弟子である木野雅之氏が共演。木野さん、本当に素晴らしい。ギトリス氏が素晴らしいのはもちろん。でも木野さんの優しい、相手を包み込むような演奏に涙…

「あ、先生そうなんですね?ではこんな感じではどうですか?」「いいね〜」という会話が聞こえてくるようで、お二人の素敵な会話を、そっとコンサートホールで聴かせて頂いたような感覚になりました。

言葉を持たない楽器の演奏から「会話」が聞こえてくる感じたことのないような初めての感覚…と思っていたところ、いえいえ!感じたことがありました!!

音で記憶する

演奏を聴きながら同じような感覚を感じた記憶を辿りました。

20年前、ヴァイオリニスト ルッジェーロ・リッチが来日した際、サントリーホールで同じプログラムを聴きました。当時「この瞬間に立ち会うことができて本当によかった。」と涙したコンサートでした。

そしてその時のリッチ氏と一緒にヴァイオリンを演奏していらしたのが木野雅之さんだったということを、ギトリス氏と共演する木野さんの音楽で思い出しました。遠い記憶のなかにある「感動」を音によって蘇えらされた素晴らしい瞬間でした。

 

巨匠の言葉

コンサートの途中ではトークセッションもありました。

会場からトークに参加した小学生の女の子がした質問は

「演奏しているときにはどんなことを考えていますか?」でした。その質問にギトリス氏は「あなたは演奏をするの?あなたは演奏をしているときどんなことを考えていますか?」

と聞き直しました。

女の子は「間違えないように・・・とか・・・。」

ギトリス氏はニッコリと笑って、「そうだよね、そう思うよね。でもね、間違いを恐れてはいけないよ。これまで創造された物の多くは間違いから生まれているのだよ。ホテルザッハのザッハ・トルテも間違いで生まれたんだよ。でもあんなに美味しいチョコレートケーキ。間違いを恐れてはいたら何も生まれなくなってしまう。」

1922年に生まれたギトリス氏の言葉ひとつひとつは優しく心に響きました。

そうそう、トークセッションの最後に来年も来ていただけるのかという観客の声に、ギトリス氏の答えは・・・

「それは神のみぞ知ることである。」

コンサート、トークセッションと夢のような時間〜

またイヴリー・ギトリス氏、木野雅之氏の演奏を拝聴したいと心から願っています。

 

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